オンライン動画の視聴者数増加に伴い、動画をマーケティングに活用する動きが急速に広がっています。こうした市場環境の変化に企業はどのように対応するべきか。そのヒントを探るため、アライドアーキテクツとCrevoが共催し、Twitter Japanがゲスト登壇した、スマホ時代の動画マーケティングをテーマとしたセミナーを取材しました。
Twitter Japan ストラテジックパートナーセールス 合原 由貴 氏
【当日のプログラム】
第1部 「Video on Twitter (Twitter動画マーケティングについての最新アップデート)」
<Twitter Japan株式会社 合原 由貴 氏>
第2部 「Twitterを正しく使い分けるポイントとは?」
<アライドアーキテクツ株式会社 小屋敷 歩美 氏>
第3部 「オンライン動画クリエイティブ制作におけるプリプロの重要性について
~低予算だからといってプリプロを軽視してはならない3つの理由」
<Crevo株式会社 越ケ谷 泰行 氏>
第1部 Twitterの動画広告で成果をあげるポイントとは?
セミナー第1部はTwitter Japanの合原 由貴 氏が登壇。Twitterが提供している動画広告の特徴や成果を踏まえ、企業の動画マーケティグへの活用のポイントを解説しました。
月間MAU4000万人のリーチメディア
合原氏は冒頭、さまざまな市場調査データを紹介しながら、国内のオンライン動画市場が急成長していることに言及し、企業が動画マーケティングに取り組むことの重要性を訴えました。
【動画視聴に関する市場データ】
・通勤や通学中の人の約50%が動画を視聴 ※1
・2014年から2015年にかけて、スマホ動画の視聴人口は約1000万人増加 ※2
・動画視聴デバイスはスマホがPCを逆転 ※2
・SNS上での動画視聴時間が長くなっている ※3
※1 電通総研「通勤・通学時における動画視聴」
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/1030-003852.html
※2 Nielsen
http://www.netratings.co.jp/news_release/2015/02/Newsrelease20150224.html
※3 Intage Single Source Panel のログ解析。Android、2015/1/1~31、2016/1/1~31で経年比較
続いて、Twitterのメディアとしての特徴を説明。直近の月間アクティブ利用者数(MAU)は4000万人に達し、35歳以上の利用者の利用も拡大しており、若年層に限らず幅広い年代に浸透していることを強調しました。
【リーチメディアとしてのTwitter】
・直近のMAUは4000万人
・35歳以上の利用者数も伸びている(幅広い年代に浸透)
・拡散や会話など、利用者のアクションを可視化しやすい
こうしたデータを踏まえ、Twitterは国内屈指のリーチメディアに成長したとして、「Twitterは単にツイートするためのサービスではない。Twitterの“マス化”を強く訴えたい」と話しました。
Twitterのインフィード型動画広告の特徴
合原氏はTwitterの動画広告の特徴や成果も紹介しました。Twitterのタイムライン上にそのまま動画を流すインフィード型広告について、「動画広告そのものがコンテンツになるため(利用者から)好意的に受け止められる」と説明。自動再生される動画広告に対する利用者の好意度は、動画投稿サイトなどのインストリーム型広告と比べて高い傾向にあるそうです。また、Twitterは大手動画投稿サイトと利用者の重複が少ないため、Twitterと動画投稿サイトを並行して利用するとリーチが大幅に上昇することなどをデータで示しました。
Twitter独自の広告表現と活用方法
続いて合原氏は、Twitterならではの動画表現として、ライブストリーミングや、カンバセーショナル (会話型) カードでユーザーツイートした利用者のみが動画を見ることができる「インスタントアンロック機能」、リツイートをするだけで当たり外れがリプライですぐ届く「インスタントウィン施策」などがあることを説明。それぞれの成功事例も紹介しました。
Twitterの動画広告に取り組む際は、「目的に応じて動画を使い分けることも重要」と指摘。「ブランド認知」の段階ではテレビCMなどの既存動画を流用して運用型広告を行い、「ブランドへの興味関心」を喚起する段階ではTwitter専用のコンテンツも織り交ぜるなど、目的に合ったクリエイティブを使うことで成果が上がりやすいそうです。
また、アカウントのヘッダー写真やプロフィールも非常に重要なポイントであると説明し、「ヘッダーにはブランドを体現している画像をぜひ使って欲しい」と提案。「Twitterアナリティクス」などのデータ分析ツールの利用も推奨しました。
合原氏は最後に、「Twitterは独自の動画機能を備えており、動画広告に活用できるリーチメディア」だとあらためて強調し、第1部を締めくくりました。
第2部 SNS広告でTwitterとFacebookを正しく使い分けるポイントとは?
第2部では、ソーシャルメディア・マーケティング支援を手がけるアライドアーキテクツの小屋敷 歩美 氏が登壇し、企業が動画マーケティングに取り組む際にSNSの媒体を正しく使い分けるポイントなどについて、同社の広告事業の事例を踏まえて解説しました。
アライドアーキテクツ株式会社 アドテク事業部 小屋敷 歩美 氏
スマホが動画視聴の有力媒体に
小屋敷氏は冒頭、マーケティングにおけるオンライン動画の重要性が高まっている背景として、若年層を中心にテレビの視聴時間が低下し、テレビCMのGRPを引き上げても潜在顧客に適切にリーチできないケースが出てきていることを挙げました。その上で、スマホやSNSでの動画視聴時間は急速に伸びていることを示すデータを紹介し、「動画を配信する場所(媒体)を変えることが重要ではないか」と指摘しました。
若年層を中心に、スマホで動画を視聴する人口は急増していることを示すデータ
ウェブ広告への接触機会の62%がモバイル経由で発生している
広告媒体としてのTwitterとFacebookの違い
続いて小屋敷氏は、SNSで動画広告を配信するときは、媒体の特性やユーザー層に合わせたクリエイティブを作ることが大切であることを強調。媒体ごとのユーザーのデモグラフィックデータだけで広告出稿媒体を選定するのではなく、「ユーザーがどのような理由でその媒体にいるのか」など、ユーザーの心理にも気を配ってプロモーションを行うことが重要だと指摘しました。その上で、TwitterとFacebookの広告媒体としての違いを説明しました。
■Twitter
Twitterはユーザーの発言が広告在庫になるため、瞬発的なニーズに対応するのが特徴。例えば、「暇」「バイトしたい」「お金欲しい」というツイートに対して人材派遣会社が広告を配信することができる。また、「趣味」や「興味関心」を軸にユーザー同士が繋がることが多い。ユーザーが興味のある事柄ごとに複数のアカウントを作るケースもある。
■Facebook
属性に根付いた潜在的なニーズを拾える。オフラインに近い人間関係が構成されるため、友達やインフルエンサーなど、情報発信を行う「人」が重要視されるメディア。
広告媒体としてのTwitterとFacebookの違い
SNS広告に適した動画とは?
続いて小屋敷氏は、SNS広告に適した動画を作るポイントとして次の2点を挙げました。
(1)無音であることを前提に作る
SNS動画は原則、無音で視聴されることを前提に作るべき。字幕を上手く使って内容を表現するのがポイント。字幕をつけることで平均視聴時間が12%伸びた調査結果もある。
(2)タイムラインに馴染むクリエイティブを選択すべき
SNSは本来、ユーザー同士が交流する場合なので、ユーザーは企業の広告を好まない。ユーザー目線でクリエイティブを制作することが重要。最初の3~5秒でどれだけユーザーの目を引くかが勝負の分かれ目になる。
小屋敷氏は、クリエイティブを工夫したことで顧客獲得単価が大幅に改善したゲームアプリ会社の例なども紹介しながら、最初の3秒間にキャッチーな字幕を入れてユーザーを引きつける手法など、SNS動画を制作する際のポイントを解説しました。
また、アライドアーキテクツが広告運用を支援しているファーストフードチェーン、大手食品企業、ゲームアプリ企業などの事例を紹介。「認知獲得」「理解促進/接点創出」「顧客獲得」といったマーケティングのフェーズに応じて、最適な動画を作るノウハウも披露しました。
TwitterとFacebookの費用対効果を比較
さらに、同じ動画クリエイティブをTwitterとFacebookに同時出稿したとき、クリック単価などがどの程度異なるかを示すデータも紹介しました。SNS広告の成果はクリエイティブの内容やターゲット層、配信のタイミングなどによって変わってくると前置きした上で、菓子メーカーやファストフード企業の「再生率」「再生単価」「50%再生率」「50%再生単価」などの数値を公開しました。
同一の動画素材をTwitterとFacebookに出稿したときの各種単価
小屋敷氏は最後に、「それぞれのSNSのユーザーが何故そこにいて、どのような情報を求めているのかなどを意識して、動画の訴求方法やメッセージを変えていくと成功パターンが見えてくる。ぜひ挑戦してほしい」と話してセミナーを終えました。
第3部 オンライン動画制作におけるプリプロダクションの重要性
第3部では、累計600社以上の動画制作を手掛けたCrevo株式会社の越ケ谷 泰行 氏が「成功する動画に必要なこと」をテーマに解説しました。
Crevo株式会社 越ケ谷 泰行 氏
動画制作はプリプロダクション(要件定義)が重要
Crevoは動画制作プラットフォームを活用し、安価に高品質な動画を制作するのが特徴。3000人以上の動画クリエイターを束ね、目的に合わせた動画や映像を制作しています。Crevoがクライアントと動画クリエイターの間に入り、ディレクションを行うことで、「価格を抑えながら品質を高められる」(越ケ谷氏)のが強みです。
越ケ谷氏は冒頭、動画を配信する媒体の選定や、企画がうまくいっても、動画施策が失敗する場合があると話し、その原因は、「企画からクリエイティブ作成に落とし込む工程の中で、クリエイティブが本来の目的から乖離してしまうことにある」と指摘しました。その上で、動画制作で失敗を避けるには、「プリプロダクション(要件定義)」が重要であることを強調しました。
動画制作の流れ。越ケ谷氏は特に「プリプロダクション(要件定義)」が重要であることを強調した。
プリプロダクションを行う仕組み
越ケ谷氏はCrevoがプリプロダクション(以下プリプロ)を行うための3つの取り組みを紹介しました。
1. 企業とクリエイターの間にCrevoが入ることで、プリプロを行う体制を構築
2. 制作フローの中にプリプロを行う工程を設けている
3. プリプロにおける要件定義の「重要項目」を抑えている
動画のプリプロを行う際の重要項目として、「予算」「スケジュール」「ターゲット」「コンセプト」「コピーワーク」「尺」「音楽・ナレーション」の7項目を列挙。その中でも特に「コンセプト」と「尺」が重要であるとして、その理由を次のように説明しました。
【動画のコンセプトが重要な理由】
コンセプト次第でクリエイティブの内容が大きく変わる。例えば、コンセプトとして取り上げる項目が「お客様の声」なのか、「データの提示」なのか、それとも「恐怖訴求」や「メリット訴求」なのかによって、動画クリエイティブは全く異なる。
【動画の尺が重要な理由】
動画の長さによって、消費者の心理に与える影響が異なる。Googleが実施した調査によると、「長尺の動画はブランド好意」「短尺の動画は広告想起」に寄与するという結果がでている。
15秒の動画は広告想起、30秒や2分の動画はブランド好意に影響を与えることを示すGoogleの調査データ
動画広告の成功事例を公開
越ケ谷氏はCrevoのプランニングチームが、動画のコンセプトや尺などを決める企画段階から携わることを説明。Crevoが動画制作を行い、高い成果を上げた通信会社の成功事例などを紹介しながら、動画制作のポイントを解説しました。
【成功事例1】通信会社
成果:CTRが過去の7倍、完全視聴率20%
理由:長尺で意味をあえて不明瞭にしたクリエイティブを制作。視聴者に「なんだ、これ」と思ってクリックさせることだけを考えてクリエイティブを制作したことが成功の要因。
【成功事例2】遺伝子検査会社
成果:女性ユーザーのCVR10%増加
理由:女性獲得にターゲットを絞り、「自分化」させやすいキャスティングを実施した。
越ケ谷氏はさらに、動画マーケティングを成功させるためのポイントとして「スマホ対応」「PDCAの推進」を挙げました。
■スマホ対応のポイント
・小さい画面でも目を引くインパクト
・無音でも伝わる工夫
・すぐにアクション出来る仕掛け
■PDCAを回すときのポイント
・「Plan」「Do」「Check」「Action」を横断的に捉る
・効果検証が可能な施策を打つ
動画を作る際には、検証や改善を行えるように設計する必要がある。
越ケ谷氏は、「検証できない施策から知見を得ることできないし、改善の余地がない施策は知見を得ても意味がない」と指摘。「動画を作る際には、検証や改善を行えるように設計する必要がある」と強調しました。
最後に、SNSを通じて動画を配信する分散型メディアが台頭していることにも言及、「企業はオウンドメディアを持たず、コンテンツをソーシャルで直接配信する時代になっていく」との見通しを示し、セミナーを締めくくりました。
会場限定の成功事例も多数公開
当日は定員80人が満席に。3社の講演後には参加者を対象とした個別相談会を実施した
今回のセミナーでは、Twitterとアライドアーキテクツ、Crevoの3社が成功事例を多数、紹介しました。社名や数値も公表していたのですが、会場限定での情報のため残念ながらこのレポートでは紹介できません。ただ、それらの成功事例からは、動画マーケティングが大きなポテンシャルを秘めていることが示されました。また、動画マーケティングの主戦場はスマホとSNSであることが明確になってきたことから、リーチメディアとしてのTwitterの今後にも注目が集まりそうです。
■取材・執筆
ライトプロ株式会社 渡部 和章
http://writepro.co.jp/
Facebook、Instagram、Twitter等のSNS広告に関して
運用を検討している、既に運用している成果を更に向上したいなど、
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