ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】
こんにちは、SMMLabの小川です。
ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きするインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】。今回は、すでに11万人を超えるファンがおり、豊富なコンテンツをウォール展開しているリクナビNEXTの原田芳江氏にお話を聞きました。
――まず、ソーシャルメディアの運営はどちらの部署が担当されているのですか?
リクルートには、私たちが所属する人材領域を扱う「HRカンパニー」の他に、住宅領域や結婚領域など様々なカンパニーがあります。現在ソーシャルメディアの運営はそれぞれのカンパニー毎に行っており、担当するチームも異なっています。私たちHRカンパニーではリクナビNEXT編集部の中の「マーケティング」チームが担当しています。
――広告・マーケティング施策の中でSMMはどのように位置付けていますか?
リクナビNEXTでは電車の中刷り広告から、WEB広告まで様々な広告・マーケティング施策を行っています。すべての施策は多くの方に「リクナビNEXT」 を知ってもらうためのブランディングを目的としています。ソーシャルメディアもその一環です。
違いがあるとすれば、ソーシャルメディアでは「転職に限った情報提供はしない」というポリシーがあるということでしょうか。リクナビNEXTというと「転職」サイトのイメージが強いと思いますが、本当に実現したいことは一人でも多くの方に「この仕事に会えてよかった」と思って頂けることです。「転職」は自分らしく働くための一つの手段でしかないですし、今の環境でやりがいを感じられるのであれば、それは素晴らしいことですよね。もちろん「今の環境で努力したが、どうしても転職しなければ…」という時には、「リクナビNEXTなんてものがあったな」と思い出してもらえたら、と考えています。しかし、私たちは決して安易な「転職」をお勧めしたいと思ってはいません。それは「転職」を考えるよりもまず、「今の仕事を充実させるにはどうしたら良いか」を考える方がずっと前向きだと考えているからです。
ソーシャルメディアを通じて、皆さんが「今の仕事をもっと楽しくする」ためのお手伝いができればと思っています。ファンの皆さんがこの場に訪れることで、自分の仕事と世の中との繋がりを知ってやりがいを感じられたり、ちょっとだけレベルアップした業務をできるようになったり…そんなきっかけをご提供する場にできたらと考えて運営しています。
―― リクナビNEXTでは、FacebookページとTwitterのアカウントをお持ちですが、それぞれどのように使い分けていますか?
それぞれメディア特性の違いがあると思っています。まずFacebookページは、様々なファンの方と、”コミュニケーションをする場”と位置づけています。一方で、Twitterは、”情報を拡散するための場”と位置付けています。基本的にFacebook とTwitterは同じテーマを投稿するようにしていますが、それぞれの特性の違いに併せて、投稿の仕方を変えています。Facebookではコミュニケーションが取れるよう呼びかけていたり、Twitterでは見出しにこだわったりとそれぞれのメディア上で興味関心をもって頂けるよう心掛けています。
FacebookページURL:http://www.facebook.com/rikunabinext
Twitterアカウント:@rikunabinext http://twitter.com/rikunabinext
――Facebookページはいつ、どのような目的で開設しましたか?
Facebookページを最初に立ち上げたのは2010年の11月です。目的は、先にも述べたとおりブランディングの一環です。リクナビNEXTでは、第一線で活躍する著名人が仕事へのこだわりを語る「プロ論。」や、将来成長が期待される業界や、今後ビジネスパーソンに求められるスキルを特集する「今週のクローズアップ」など様々な情報をご提供していますので、これらの記事を中心に、ビジネスに役立つ情報をご紹介しています。
――現在Facebookページはどのような体制で運用されているのですか?
現在は、2名で運営しています。私がプロジェクトリーダーとして統括をしており、もう1名コンテンツ担当者として専任がいる状況です(右写真:コンテンツ担当者の田中美穂氏)。 尚、私自身は、SMMだけではなくリクナビNEXT編集部のデスクも担当しておりますので、ソーシャルメディア運営に費やす時間は大体、全体の2割くらいです。
――原田様がプロジェクトリーダーに選ばれた経緯を教えてください。
現在ウォール投稿内容は、リクナビNEXTの記事を軸に構成しておりますので、記事の統括を行っている私が兼任するというのは、自然な流れでした。また今後ソーシャルメディア上で新たな切り口のコンテンツを展開する際にも記事企画経験があった方がスムーズに進められる、という観点もあったのではと思います。
――毎日のウォール投稿内容はどのように決めていますか?
まずは1ヶ月くらいのスパンで、どのようなテーマをどの日に投稿するかというラインナップを決めています。その上で、直近1週間から2週間分の投稿について、具体的にどの記事を投稿するということを決めています。実際の投稿文章は、時節柄や時事柄もありますので、作り置きはせず2~3日前など直近で準備するようにしていますね。
内容は、先にも述べたとおりリクナビNEXTの記事が中心です。私たちがリクナビNEXTでご提供しているような「ビジネス」に関する情報は、職種や業界・年齢によって知りたい情報が一人ひとり全く異なると思っています。そのため、個々の記事を作るときには、ある一人の特定の方を想定し、とにかく自分がその人になり代われるくらいに状況や気持ちを想像した上で、その方の興味関心事に合わせた記事を作るようにしています。
Facebookページでは、職種や業界・年齢を超えて多くの方に集まって頂いているため、このような「ある一人の方」を意識した記事をバランスよく投稿するよう心掛けています。投稿後はFacebookのインサイトで、コンテンツタイプ別にどの投稿がファンの方に受け入れて頂けたのか、確認しています。そこで確認した結果を元に、また次のプランを組んでいくようにしています。曜日や時間による違いも参考までに見ていますが、正直まだ傾向は、よく見えていないですね。
――ウォールの投稿で、「編集部のミホです」など人の名前を出す投稿を行われていますね。その経緯と成果を教えてください。
実は、Facebookページを立ち上げて最初の頃は、この場でどんな価値を提供したいのか定まりきっていなかったため、リクナビNEXTにあるコンテンツをそのまま紹介することが多かったんです。その中には「転職」に関するものも多くありましたので、投稿にもなかなか関心を持って頂けないという状況が続きました。でもより多くの方に読んで頂きたい、その間をつなぐ役割として「人」が登場するのはどうだろう?という考えになりました。実際に、編集部のメンバーが登場し始めたのはFacebookページを立ち上げて半年弱くらいの頃です。「人」が登場してからは、ファンの方からのコメントを頂くことが多くなったように思います。
――他のFacebookページでは、よくキャラクターをたててウォール投稿しているパターンも見られると思うのですが、その中で今の形を選択した理由は何ですか?
もちろんキャラクターを立てるということも検討しました。しかしリクナビNEXTの場合は、「ビジネス」に関わる内容が主になるので、実在の人物の方が真剣に話ができ、かつ親しみも持ってもらえるのではないかと考えました。ただ「誰が語るか」ということは重要な要素であるのですが、やっぱり最も重要なのは「情報自体にどれだけ価値があるか」ということだとは思います。
――その他に、コミュニケーションを活性化するために、具体的にどのような取り組みを行っていますか?
こちらだけで完結しないような投稿をしようと心がけています。情報をご提供したあとに、じっくり深く考えて頂ける内容だったり、時には2択で気軽に回答できる内容をご提供してみたり。とにかく内容が広がるようにしようと心がけていますね。
ご意見を頂けるのはとにかく嬉しいんです。これまでは記事を見て頂いている方と直接コミュニケーションをする場がなく、本当にお役に立てているのかが分からなかったため、不安に思うこともありましたが、ソーシャルメディアではリアルタイムでご意見を頂けます。私自身、「見て頂けたから良い記事とは限らない」と常に思っていますので、どんなご意見であっても、コメントを頂けること自体が嬉しいですし、頂いたご意見を参考にしていきたいとも思っています。
――今までのウォール投稿の中で、ファンとのコミュニケーションの観点から、印象に残っているものはありますか?
今までで印象に残っているものは「プロ論。」に対するファンの方からの反応ですね。記事をご紹介した投稿に対して、ファンの方が「内容に刺激を受けました。私も叶えたい夢があるので頑張ります!」というコメントを寄せてくださったんです。今までファンの方が「将来の夢」を教えてくださることはなかったので、本当に嬉しかったです。頂いたコメントに対してこちらからも「頑張ってください」と応援できる…これからもそんなやり取りが生まれる場にしていきたいと気持ちを新たにしましたね。
――Facebookページでキャンペーンも実施されていますが、どのような目的で実施したのでしょうか?
「ファンの方にご参加頂き、楽しんでもらう」という目的で行いました。2011年の8月から9月にかけて「モニプラ」で実施した「あなたがもらった“次へ進むコトバ”コンテスト」というもので、疲れた時、怒った時、凹んだ時に、上司や先輩、同期、後輩など周りの人からもらったさりげないけど、すごく背中を押されたコトバをファンの方から募集して約1ヶ月の間に850を超えるコトバを頂きました。ビジネスパーソンの方に広く参加して頂けるテーマだったので、「日々の投稿は見ているだけだけど、これなら投稿できるかも!」と思ってくださった方が多かったように思います。
キャンペーンのテーマ設定はすごく大事だと思います。ファンになって頂いた後に「ファンの方が得たい情報」と「私たちがご提供できる情報」の齟齬が生まれるのは、お互いにとってよくないからです。それからキャンペーンは、やっぱり情報をお届けするための手法でしかないと思っています。私たちはウォールで日々ご提供する情報を通じて、新しい発見や気づきをお届けできたらと思っています。価値ある情報をお届けする方法としてキャンペーンという形を取るのが最善策ということであれば実施したいと思いますが、他にも色々な選択肢があるので、「とりあえずキャンペーン」と考えるのではなく、「なぜキャンペーンなのか」ということをきちんと検討した方がよいと思います。
――今後のFacebookページ運用の課題は何ですか?
「私たちの投稿に目を留めてもらう」という点について課題があると思っています。自分自身もニュースフィードを見ていて思うのですが、一日に何百・何千の情報が流れる中で、実際に目を留めるのはごく一部。友人の近況報告や、著名人のフィードなど多くの情報が流れていく中で、「私たちの情報はどれだけの価値があるのだろう?」と、いつも自問自答をしながら、投稿を考えるようにしています。工夫する余地は多いと思いますので、今後は、投稿内容をブラッシュアップしていこうと思っています。
Facebookページは、リクナビNEXTのブランディングの一環として運営していますので、例えば「人を傷つけることは言わない」など、最低限守らないといけないことはありますが、その上であれば、色々トライアンドエラーを繰り返し、正解を見つけていければと考えています。
――リクナビNEXTとして、これからソーシャルメディアに期待することや、目指す姿を教えてください。
はじめにお伝えしたことと重なるのですが、「仕事に対して前向きな気持ちになれる場」をご提供していきたいと思っています。そのために私たちがお届けする情報自体を磨いていくのはもちろん、一人でも多くの方にこの場に参加して頂けたらと思っていますし、その上で多くのコミュニケーションが生まれるとより、ファンの皆さんにとっても新しい発見が増えるのではと考えています。ちょっと先の未来を考えると、この場で「この仕事に会えてよかった」という言葉がたくさん生まれていくと最高に嬉しいですね。
リクナビNEXT Facebook 10万人THANKS!ページURL:http://www.facebook.com/rikunabinext?sk=app_226449800771761
<インタビュー後記>
11万人超の多数のファンを抱える裏側には、非常に地道な「日々の検証と改善の積み重ね」があるのだなと感じました。ページの運営”目的”については 一貫してぶれない軸を持ちながら、運営”方法”については日々の振り返りから柔軟に変更、対応をしていく姿勢に、改めて基本の大切さを学ぶことができたように思います。(SMM Lab 小川)
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原田芳江氏 プロフィール
株式会社リクルート HRカンパニー キャリア領域企画室 サービス統括G
インタビュアー:小川 裕子(アライドアーキテクツ株式会社 SMMLab)
■参考リンク:国内最大級 Facebookキャンペーンアプリサービス「モニプラファンアプリ for Facebook」
http://fan-app.monipla.jp/
■【企業担当者に聞くSMM最前線】
・株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 高橋 淑恵氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=5027
・タマホーム株式会社Facebook課 川野和義氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=2717
・ライフカード株式会社 鎌倉早佑理氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=2473
・リーデル(RSN JAPAN 株式会社) 西村 敏雄氏(1/2):
http://smmlab.jp/?p=681
【企業担当者に聞くSMM最前線】リクナビNEXT~ファン11万人超えのFacebookページ裏側にある緻密なPDCAサイクルとは? 株式会社リクルート HRカンパニー 原田芳江氏
2012.03.29
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