注目を集めるゲーミフィケーション。そのメカニズムを利用した9つの海外事例をご紹介します。
こんにちは、SMM Labの小川です。
ゲームの要素を上手に取り入れ、顧客のリピート、ロイヤルカスタマー化を目指す”ゲーミフィケーション”というキーワードが注目を集めています。さらにソーシャルネットワークの普及が進んだ現在は、一部の限られた顧客のロイヤルカスタマー化(エンゲージメントの追求)だけではなく、その周囲の友人をも巻き込む効果が期待されます。
そこで今回は、Mashableに掲載された「How 9 Retailers Successfully Leveraged Game Mechanics」の記事をご紹介します。

1.ナイキ「Winter’s Angry」キャンペーン

URL:http://fightwinter.nike.com/
ナイキは2011年12月に、冬物ウェアのプロモーションとして、「Winter’s Angry」というキャンペーンを開催しました。
このキャンペーンは、ユーザーがナイキのキャンペーン用特設サイトにアクセスし、反射神経を競うゲームを行うもの。ゲームには女子サッカーの選手やオリンピックの金メダリストが起用され、キャンペーン期間中の最高得点を出した上位2名にはナイキの世界級のアスリートと会う権利がプレゼントされました。さらに、1日毎の最高得点者にもプレゼントを用意。これにより、一度のみならず、毎日サイトに訪れ、キャンペーンに参加させるモチベーションを与えています。
また、同ゲーム中に選手が来ている冬物ウェアは、気に入ればすぐに購入できるよう、きちんと同じサイト内に導線が用意されています。もちろんサイト内にはFacebookやTwitterへのシェアボタンが用意されています。
 
2.Norma Kamaliの3D映画

URL:http://www.normakamali3d.com/
2011年のはじめ、ファッションデザイナーブランドNorma Kamaliは「Norma Kamali3D」という3DとEコマースを掛けあわせたプロモーションを開催しました。このプロモーションは自社サイト、及びFacebookページ上で行われたのですが、プロモーションが開始するとすぐにFacebook上の20, 000人を超えるファンが、Norma Kamaliが提供している無料の3D眼鏡をリクエストしたそうです。(これにより、その友人たちへのブランドの認知・訴求効果がかなりあったと思われます。)
この動画では、決して3D眼鏡の宣伝をしているわけではありません。”ただ3D眼鏡を使うとより楽しく見られる動画を掲載していた”、ということこそが、逆にそれを求める心理に働きかけたと言えます。
 
3.ALDO インスタグラム活用キャンペーン

URL:http://www.aisforaldo.com/
ALDOは新しい香水のプロモーションとしてDynamoとALLDAYEVERYDAYという会社と提携しFacebookゲームを作りました。ユーザーがインスタグラムの写真を自分の今のムードに合わせて選択すると、その情報から自動判定し、ALDOがユーザーに「あなた向けのお勧めの香水」を提示するというものです。もちろんそれはFacebookにシェアすることができます(現在よく見られる診断系アプリと似ている事例と言えます)。
この取組みの面白さは、今まで小売でインスタグラムやFacebookをこのような方法で活用した事例がひとつもなかった点です。ユーザーにバーチャルな体験をさせることで、自然と自社サイトへの誘導に成功しています。
 
4.Bonobo Eコマースにおけるゲーミフィケーション

URL:http://www.notcot.com/archives/2011/11/bonobos-hidden-on-notcot.php
BonoboというメンズアパレルのEコマースサイトは、今年ゲーミフィケーションを活用したプロモーションを実施しました。NOTCOT.orgというサイトとTwitterを利用したキャンペーンで、ユーザーはNOTCOTのサイトに訪れ、そのサイト上に隠された”Bonoboのサインが書かれてあるズボン”を探し当てます。見事発見できた人先着50名に、キャンペーン期間中毎日、Bonoboで使える25ドル分のクーポンと、送料無料の権利をプレゼントしました。さらに、ある特別な写真を発見できた人には、100ドル分のスペシャルクーポンをプレゼントしました。
このキャンペーンの注目ポイントは、
・毎日プレゼントを用意することで、一度のみならず毎日サイトに訪れるモチベーションを与えていること
・さらに毎日”先着”順でプレゼントとすることで競争心を駆り立てている点
と言えます。
また、Bonoboのマーケティングマネージャーは、次のように語っています。「我々のEコマースでゲームを作るときのポイントは、決してセールスにフォーカスするのではなく(not commercial)、あくまでソーシャル(to be social)であることに集中するという点です。ファンはブランドとコミュニケーションを取りたがっています。ファンからの反応を得られるような投稿やツイートを行うことに集中することで、よりファンを巻き込み、ロイヤルカスタマー・エバンジェリスト化(ブランドの伝道師)することができるでしょう。」
 
5.Giltグループ VIP待遇なソーシャルリワードシステム

高所得者層をターゲットにしたフラッシュセールスを行うGiltグループは、”Gilt Noir”というロイヤリティー・プログラムを実施しています。これは、オンライン購入者のほんの一握りである1%のロイヤルカスタマーに対してのみプレゼントを行い、また一般にセールを公開する15分前にサイトにアクセルできる権利を提供するものです。
通常、顧客へのメリットというと、”ディスカウント”になりがちですが、Giltはその代わりに、特別にサイトにアクセスする権利を提供しました。このように、他の人とは違うという”特別扱い”をすることで、顧客に優越的な感覚を与えています。また、一度このような権利を獲得した顧客は、それを維持したい心理が働くようになるので、自然とその後のサイト利用頻度も高まる、という仕組みです。
 
6. BlueFly and Badgeville

URL:http://www.bluefly.com/
2011年の始め、アパレルブランドBlueFlyは、Badgevilleと一緒に、BleulFlyの顧客にバッジとリーダーボードを用いてオンラインショップ、及びコミュニケーションを促す取り組みを実施しました。
顧客は、BlueFlyのサイト上で動画を見る、ウィッシュリストを作る、レビューを書く、ブログを読むなどの何らかのアクションを取ることによって、リワードとしてバッジをもらうことができます。より多くのバッジをもらった人には、BleuFlyの特別セールや商品へのアクセスが提供されるという仕組みです。もちろんショッピングサイトにはFacebookやTwitterのシェアボタンが導入されています。
 
7. Valentino 3D Museum

12月に、ラグジュアリーファッションブランドであるValentinoは、マックとPCのデスクトップにダウンロードできるアプリケーションとして、バーチャルな3Dミュージアムを開始しました。そのアプリ内では、300を超えるバーチャルドレス、5, 000を超えるイメージ、95近くもあるファッションショービデオが提供されています。このアプリは初日だけで10, 000を超えるダウンロードを記録しました。
この取り組みの面白い点は、Valentinoという伝統あるブランドが3Dデジタルのイベントを実施した点です。新しい取り組みを行いながらも、企画の内容を工夫することにより、伝統的なイメージを継続することに成功しています。
 
8. Best BuyとCityVille

家電のBest Buyは2011年秋に、2億3千万人のアクティブユーザーを誇り、7, 100万人のFacebookユーザーが利用する”CityVille”というゲーム内で、Best Buyのバーチャルショップを建てられるプロモーションを実施しました。この取り組みの面白い点は、すでに世界中で認知されているゲームの中に実際のビジネスが参加した点です。これは、CityVilleにとっても初めての試みだったそうです。
 
9. HSN Arcade Entices Fans To Stay Onsite Longer



URL:http://arcade.hsn.com/
オンラインとテレビショッピングを展開するHSNは、HSN Arcadeというプロモーションで、顧客がより長くHSN.comのサイトに滞在する試みを行いました。HSN Arcadeでは、HSNのテレビチャンネルのライブ映像を見ながら、25のビデオゲームを無料で楽しむことができます。このゲームの得点はFacebookにシェアできる仕組みになっています。この、ショッピングとソーシャルネットワークとゲームを融合させる取り組みにより、女性オンラインユーザーとのエンゲージメントを深めることを目指しています。
 
9つの事例に共通すること
以上、今回は海外の小売ビジネスで、ゲーミフィケーションメカニズム、またはゲームそのものを上手に活用している事例を9つご紹介しました。
9つの事例に共通して言えることは、
・ゲームの要素を上手に取り入れ、ユーザに楽しさを提供している
・毎日プレゼントを提供したり、頻度高く利用することで特別な権利を与えるなど、ついつい繰り返し利用したくなる仕組みを取り入れている
・ゲームというバーチャルな空間を通じてブランドの世界観を伝えると同時に、知らず知らずの内にブランドへの親しみを持つように工夫している
といった点ではないでしょうか。
これらの点は、お金をかけて立派なゲームアプリを構築しなくても、十分に参考にできる要素かと思います。あなたのブランドでも活用できるポイントはありそうでしょうか?ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください!
■参考記事:Mashable How 9 Retailers Successfully Leveraged Game Mechanics
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