こんにちは、SMM Labの小川です。
今年から予算を増やし、さらに本格的にソーシャルメディアを運用しようとされている企業も多いかと思いますが、そのためにはまずは社内での体制作りと、運用ポリシーの策定が重要です。
特に企業の規模が大きくなればなるほど、広報部、宣伝部、マーケティング部、企画部、CSR部、お客様相談室など「ブランディング」や「お客様とのコミニュケーション」に関わる組織は多岐に渡ります。万が一、それらの部署の伝えるメッセージや顧客への対応がそれぞれに異なっていることがあれば、ブランドのイメージを毀損するだけでなく、顧客からのクレームや炎上にもつながりかねません。
そのため、会社として伝えるメッセージは何か?どのようにそれをモニタリングし、部署間の連携をとっていくのか?、まずはしっかりとした体制作り、及び運用ポリシーを策定し、「会社として一貫性のあるメッセージを発信し続けていくこと」が求められます。
そこで今回SMM Labでは、ソーシャルメディア活用の最先端を行く企業がどのような組織体制、及び運用ポリシーでソーシャルメディアを運用しているのか調べ、そこから導き出される「ソーシャルメディア運用体制構築」のポイントを4つにまとめました。


New office / Phillie Casablanca



■事例1:日産自動車株式会社~広報・マーケティング・ブランド部門を統合し一貫性のあるメッセージを~
日産は、2010年10月に広報部、マーケティング、ブランド部門を一つに統合、新たに総勢約60名の「グローバルマーケティングコミュニケーション」という組織を新設しました。
従来は、アナリストや記者に情報発信を行う広報部、販売会社に情報発信を行うマーケティング部、消費者への情報発信を行うブランド部は別々の組織であり、それぞれに責任者が存在していました。本来、それぞれの部署が同じメッセージを発信するべきところ、万が一部署ごとに伝える内容が異なるようなことがあれば、それはブランド価値を上げるどころか毀損してしまいます。情報伝達の速いソーシャルメディア時代には尚更その傾向は強くなります。そのような背景から、日産ではすべての部門を一つに統合することを決意したといいます。
さらに2011年8月末にはYouTubeやUstreamへの動画配信を念頭に置いた「日産グローバルメディアセンター」を設立。その目的は、プレスリリース・記者会見をしてメッセージを伝えるという従来のスタイルから、自らが動画の撮影から編集・配信まで行い、マスコミ、消費者、投資家などすべてのステークホルダーへの告知を一気通貫で行うことだとのことです。
「一貫性のあるブランディング実現」のために、関係部署を統合するだけではなく、ブランド発信拠点を自社内に設立した日産。非常に学ぶことの多い事例だと思います。
参考:日経デジタルマーケティング「日産に学ぶ、ソーシャルメディア時代の組織改革」

 
■事例2:タマホーム株式会社 ~ブランディングを担う部門の責任者がソーシャルメディアを深く理解~
ファンとのリアル交流会の開催や、マスメディアと連動したFacebookキャンペーンの開催等、先進的な取り組みを行うタマホーム株式会社でも、「広告宣伝部」という一つの部署の中で、マーケティング、ブランディング、ソーシャルメディアが統括されています。

以前実施したインタビューで、広告宣伝部Facebook課川野係長は、次のように述べています。『マーケティング課が与える情報を作る、ブランディング課が会社のイメージを作る、そして恐らくそれらの情報やイメージからソーシャルに入ってきてくれた人と、Facebook課が直接コミュニケーションを行う。タマホームにとってソーシャルメディアマーケティングとは、チラシやCMなど、従来からの広告・マーケティング施策でフォローしきれない「コミュニケーション」を行うものだと位置づけています。現在、それぞれの課が、それぞれにフォローしきれない部分をフォローしあい、とてもよい体制になっていると思いますね。』
さらには、この広告宣伝部が所属する本部の責任者である常務取締役自身がソーシャルメディアを深く理解し、楽しんでいるため、判断が早いと言います。企業として一貫性のあるメッセージ発信にあたり、ソーシャルメディアの影響力を責任者がしっかりと理解していることが非常に重要だと言えるでしょう。
参考:【企業担当者に聞くSMM最前線】タマホーム株式会社Facebook課 川野和義氏(1/2)
 
■事例3:全日本空輸株式会社(ANA)~社内で様々な部門を経験した人間をソーシャルメディア担当に~
国内Facebookページのエンゲージメント率トップを誇るANAでは、営業推進本部 WEB販売部がソーシャルメディア運用を行っているようです。ANAのWEB担当は約50名。営業推進本部 WEB販売部は、国際線や国内線の販売を担当する「国内チーム」「国際チーム」、新しい案件を担当する「WEB企画チーム」、そしてお客様とコミュニケーションをとる「顧客チーム」という編成になっているそうです。

特筆すべきは、その担当者の経歴。広報、セールス、カウンターでの接客、WEB等、社内の様々な部門経験者が担当することにより、他部署の状況を把握したり、部署間の横の連携が取りやすくなっていると考えられます。
社内での様々な経験、ネットワークのある社員を運用担当に置くことも、非常に重要なポイントであると言えるでしょう。
参考:株式会社ニューズ・ツー・ユー Facebookはファンづくり、公式サイトは販売。役割が違えば運営の方法論も異なる/全日空の場合
 
■事例4:株式会社良品計画(無印良品) ~運用ポリシーをしっかりと定め、社内で連携~
ソーシャルコマースサイト「my MUJI」や、ソーシャルゲーム「MUJI LIFE」、またリアル店舗と連動したTwitter/Facebookキャンペーンの開催など、つねにソーシャルメディア界の最先端を行く無印良品。その運用は、宣伝販促室と同じ指示系統の組織に属する、「WEB事業部」が行っているようです。

無印良品では、ソーシャルメディア運用について、運用ポリシーがしっかりと定められています。2011年7月にLooops.TV用として公開されている資料によれば、運用ポリシーとして次の5点が掲げられています。
・握手をするくらいの距離感
・押し売りしない(商品PRも、あくまで紹介にとどめる)
・無印良品のアノニマス性を壊さぬよう、あえて一人称を出さない。しかし、その先に「人」がいることを感じさせる対応。
・質問には可能な限り返信するが、判断が難しい内容はお客様室等と連携
・原則勤務時間内での対応
ソーシャルメディアを運用する際に、このように事前にしっかりとブランディングを意識した運用ポリシーを定めておく必要があると言えます。

参考:第16回Looops.TV 日本最先端ソーシャルブランド「無印良品」徹底研究 ~確固たる地位を築く秘訣とは?~
 
以上の事例から考えると、ソーシャルメディア運用体制を構築する際のポイントは以下4点にまとめられます。
1.ソーシャルメディアの運用は縦割り/独立の組織ではなく、横の連携をとった組織で運用すること
関係部署を組織として一つに統合することが難しかったとしても、それぞれ関係する部署同士が必要に応じてすぐに連携し、またモニタリングし合えるように体制を整えておくことが重要です。
2.まずはブランディングに携わる責任者が深くソーシャルメディアを理解すること
ソーシャルメディアの影響力を把握するために、まずは責任者自らが身を以て体験し感覚を養っておくことが大切です。
3.ソーシャルメディア運用担当を適切に選任すること
コミュニケーション能力の高さ等の基礎能力があることは大前提として、できれば社内での様々な部署経験があり、社内での調整能力が高い人を担当にするとよいでしょう。
4.実際にソーシャルメディアを運用するに当たり、ブランディングに照らし合わせた運用ポリシーを事前にしっかりと定めること
とは言え、都度部署間での連携・確認をとるなどのステップを踏むと、ソーシャルメディア担当が自由に行えることが少なくなり、スピード感や柔軟性のある運用を行うことができません。まず最初に、ブランディングに照らし合わせてしっかりとソーシャルメディア運用の枠組みを決め、その範囲内においては、担当者がスピーディーで柔軟性のある対応を行えるようにしておくことが大切です。
 
以上のように書くと当たり前のことのように思いますが、意外と実践できていない点もあるのではないかと思います。
あなたの会社のソーシャルメディア運用体制はいかがですか?企業として、一貫性のあるメッセージを発信できていますか?改めて問い直していただくきっかけになれば幸いです。
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