こんにちは、SMMLab研究員の藤田です。
ソーシャルメディアマーケティングの効果測定は、すべてのマーケターや経営者が頭を悩ませる課題の一つ。SMM先進国のアメリカではThe Old Spice Guyのように、ソーシャルメディアによるマーケティングが、明らかな効果を発揮している企業がたくさんあることは事実ですが、それがどんな企業でも当てはまるわけではないことから、「ROIの測定方法」が最大関心事の一つであることは日本とあまり変わりがありません。(参考:Social Media Surf「Wieden+Kennedy Old Spice Guyキャンペーンのケーススタディビデオ」


事実、今アメリカで話題のSNS形式Q&Aサイト「Quora」に寄せられた、「ソーシャルメディアのROIはどうやって測るの?」という質問には、コンサルタントやアナリストから45もの回答が寄せられ、議論が深まっています。
How would you measure the ROI in social media?
興味深いのは、どの回答も「指標の数値推移をそのまま効果結果として判断してはいけない」という趣旨であることです。
ウェブでは、インプレッション、クリック数/率、ユニークユーザー数やページビュー、コンバージョン(会員登録/資料請求/商品購入など)獲得数/率など、ユーザーの動向が詳細に計測可能で、指標として数値化できることから、様々な指標の動きがそのまま効果測定の結果ととらえられがちです。しかし、「ソーシャルメディア」は消費者との中長期的な関係性を構築するための領域であることから、ブランディングやマインドシェアの高まり等、数値化することが難しい定性的なポイントも重視する必要があるため、定型的、画一的な評価・判断が難しいとされてます。
そこで今回は、「効果測定」に関する基本概念を、「Facebookマーケティング戦略」(池田 紀行 (著), 株式会社トライバルメディアハウス (著) 翔泳社刊)を参考に、考えてみたいと思います。

via focus.com

 
「目的」が達成されたかを判断する指標とは?
効果を測定するには、まず目的を明確にする必要があります。効果測定の「効果」とは、「目的の達成度」ということになりますが、ウェブマーケティングの「効果測定レポート」には多様な「指標」が並んでいるばかりで、それらが「目的の達成」にどう繋がっているのか、そのいちばん重要なところが見えない場合が多くなっています。
本来、目的が達成されたかどうかを図る指標としては、「KGI(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)」があり、その下にKGIに影響を与える指標として「KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)」を設定すべきであり、KGIの達成に向けプロセスが適切に実施されているかを計測するのがKPIなのです。
そして、このKPIを評価するのはROI(Return On Investment=投資対効果)であり、短期的なコンバージョンを中心として評価するものは、「投資」ではなく「費用」ととらえ、ROC(Return On Cost=費用対効果)として分けて考えるべきです。
 
その「ゴール」、ソーシャルメディアマーケティングだけで達成できますか?
「投資」と「費用」の違いは、その活動を止めた後も、その効果が持続するかどうかであり、ソーシャルメディアマーケティング活動にも、この「投資」「費用」の2つの側面があると言えます。「いくら使って、何が得られたのか」を考えるときに、費用対効果(クリック数、PVやUU、コンバージョンなど)だけで測定するのではなく、投資対効果、つまり、興味喚起率、ブランド好意度、購入意向度、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)変化率などの指標についてもしっかりと測定することが、ソーシャルメディアマーケティングの成果を正確に把握する出発点となるのです。
つまり、消費者とのエンゲージメントをKPIのひとつに加え、それがKGIとどのような関係にあるのかを解き明かしていくことがソーシャル時代の効果測定として重要となります。
ウェブの「効果測定レポート」で、ただ詳細なだけのレポートが無意味な代物になりがちなのは、たいていの場合、最終的な目的が明確になっていないがために的確なKGIが定義できず、本当は途中経過にすぎないKPIを「結果」と混同してしまうからです。また、 KGIはその施策のみで、達成可能な設定である必要があります。つまり、ソーシャルメディアマーケティングのKGIなら、ソーシャルメディアの活用だけで達成可能なものに設定しなければならないということです。
「マーケティング」の最終目的はもちろん「増益」ですが、それはソーシャルメディアだけで達成可能なゴールでしょうか?自社にとって「ソーシャルメディア」だけで達成可能なゴールはどこか、まずKGIを策定するところから始めてみてください。
あなたが目指す最終ゴールはどこですか?
<参考>
「Facebookマーケティング戦略」
池田 紀行 (著), 株式会社トライバルメディアハウス (著) 翔泳社刊